テルアビブ、世界最高のハイテク・エコシステムの年間ランキングで5位に浮上

米調査会社であるStartup Genome社が毎年行っている、スタートアップとイノベーションにとって世界で最も魅力的な、エコシステムをランキング化する年次調査において、テルアビブは前回の7位から2つ順位を上げて5位に入りました。

この調査は、世界140以上のエコシステムにおいて世界のスタートアップ業界をマッピングし、350万社のスタートアップのデータを照合したものです。Startup Genome社のモデルによると、エコシステムのランキングが高いほど、初期段階のスタートアップが世界的な成功を収める可能性が高いことがわかっています。

カリフォルニアのシリコンバレーが今年も1位の座を守り、ニューヨークとロンドンが再び同率2位となりました。ボストンと北京はトップ5からそれぞれ6位と7位に後退し、ロサンゼルスが4位に、テルアビブが5位に浮上しました。シンガポールは初めてトップ10入りし、昨年より順位を10上げた8位の座を確保しました。また上海とシアトルがトップ10入りを果たしています。

2012年から毎年発表されている『Startup Genome Ecosystem 2023 report』では、世界のテック業界が厳しい年に直面しているにもかかわらず、イスラエルの順位が向上したことが指摘されています。この調査は、イスラエル政府が2023年初頭に司法制度の改正案を発表する前に実施されたもので、テック業界のリーダーたちは、同国のチェック・アンド・バランスのシステムが損なわれ、イノベーションと投資のハブとしての地位が損なわれる可能性があると警鐘を鳴らしています。

テルアビブ市のRon Huldai市長は、「テルアビブ市がランキングのトップ5に入ったことは、多様性と自由主義という価値観とともに、創造性と思想の自由が、繁栄し成功するハイテク産業の基盤を形成していることの決定的な証拠です。テルアビブはこの価値観を守り続け、市内で活動する新興企業やハイテク企業にツールや支援、サポートを提供していきます」と述べています。また「（テルアビブは）イスラエルの中心的なハブであり続け、ハイテク企業にとって歓迎すべき拠点であり続けるだろう」と自信を表明しました。

2022年はイスラエルのハイテク産業にとって厳しい年となり、イスラエルのハイテク新興企業への投資は前年からほぼ半減の155億ドルに落ち込みました。金利上昇やバリュエーションが不透明なため、起業家や投資家は様子見モードに入っています。またPwCイスラエル社による『the 2022 Israel High Tech Exit report』によると、2022年のM&AやIPOを含むイスラエルのハイテク企業のエグジット額は、2021年から80％も落ち込み、総額169億ドルに留まる結果となりました。

Startup Genome社によると、テルアビブのテック・エコシステム全体の評価額は、世界平均の346億ドルに対し2350億ドルで、イスラエルのフィンテック企業Pagaya社による85億ドルのIPOを筆頭に、10億ドル以上のイグジットが「急増」したことに後押しされたと述べられています。
テルアビブではまた、ユニコーン（評価額10億ドル以上の未上場企業）の数が2020年後半から2022年末までに33社増加し、合計57社となりました。同レポートは、ブロックチェーン企業のFireblocks社を85億ドルの最高額ユニコーンと評価しています。

この年間ランキングでStartup Genome社は、以下の6つの成功要因を測定しています。
①撤退の数と成長・成功した新興企業の数を考慮したパフォーマンス
②資金調達へのアクセスと質
③市場へのリーチ（世界市場を開拓する能力）
④優秀な人材採用の容易さ
⑤エコシステム内での他の企業とのつながり
⑥知識、出版物の影響力と特許の尺度

シリコンバレーは、⑥知識を除いたこれらの成功要因のすべてで10点を獲得しました。一方、テルアビブは、③市場へのリーチで10点、①パフォーマンス、②資金調達、⑤つながりで9点、④人材と経験で8点、⑥知識で比較的低い5点を獲得しました。

産業分野別では、テルアビブはライフサイエンス、サイバーセキュリティ、AI、ビッグデータ＆アナリティクスの分野における人材密度の高さで脚光を浴びました。スタートアップ企業がテルアビブに移転する要因として、同市の確立されたスタートアップ・シーンと税制優遇措置が挙げられました。