COLUMN Reika Saito / Israel Media
COLUMN

Reika Saito / Israel Media

2022年09月20日掲載

Miller判決について(1)

Facebookの広告掲載契約をめぐるイスラエル最高裁判所の判断

昨今、GAFAなどの巨大プラットフォーマーが当事者となっている法的紛争は世界中にたくさんありますが、最近、イスラエルの最高裁判所においてもFacebookのビジネスモデルをめぐる紛争に関して興味深い判決が出されていますので、ご紹介したいと思います。

今年7月26日、イスラエルの最高裁判所は、Troym Miller Ltd. v. Facebook Ireland Ltdの事件について判決を下しました(イスラエルでは「Miller判決」と呼ばれているようです。)
この事件は、Facebookの広告サービスを主要な広告プラットフォームとして利用しているイスラエルの地元中小企業が、Facebook側の過失によって自分たちの広告がFacebookユーザーの目に触れることを阻害された結果、深刻な損害を被ったと主張して、Facebookを相手取って起こした訴訟事件です。
第一審と控訴審では、いずれも、地元企業が同意したFacebookの利用規約に準拠法条項(契約の内容をどの国の法律を適用して解釈するかについての定め)が存在し、この準拠法条項によって準拠法がカリフォルニア州法と指定されている、とするFacebook側の主張が認められていました。
そこで、これを不服とした地元企業側が、最高裁判所に上告したのです。

最高裁判所は、カリフォルニア州法を準拠法とする準拠法条項は、その実、立場の強い当事者が立場の弱い相手方に押し付けることができる契約条項であり、非良心的な内容であるから無効であるとしたうえで、カリフォルニア州法の代わりにイスラエル法を当事者の関係や紛争解決の指針として適用すべきであると判断しました。
イスラエルでは、外国法を準拠法と指定する準拠法条項を定めること自体は認められており、最高裁判所も過去の判決を通じて、どういった場合にそういった準拠法条項が適用できるかに関して一定の指針を示してきていたところです。
今回のMiller判決は、その指針の内容を補足するという意味合いがあり、イスラエルの地元顧客に与えられる保護の範囲を広げ、特に、小規模な企業を保護する役割を果たすものといえます。

Miller判決において多数意見(Willner判事、Grosskopf判事)は、Facebookが、イスラエルの地元顧客との関係を規律するのにイスラエルの法律ではなくカリフォルニア州法を選択することを通じて、イスラエルの顧客を犠牲にし、その犠牲のうえに自社に過大な保護を与えているため不当であると非難しました。
Facebookはイスラエル以外のその他の国においても同じ約款・同じ準拠法条項を適用しており、これによって、世界中どこでもカルフォルニア州法を適用できる状況を確保しているわけですが、言ってみれば、イスラエルの裁判所は、そういうことは地元企業を犠牲にして自己を利する強者の横暴だと非難したわけです。

このMiller判決は、イスラエル企業が当事者となる契約において外国法を準拠法と指定すること自体についても基本的な考え方を示しており、その点も実務的には重要ですので、稿を改めて書きたいと思います。

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