COLUMN Reika Saito / Israel Media
COLUMN

Reika Saito / Israel Media

2022年09月16日掲載

医療機関をサイバー攻撃から守るスタートアップ

医療機関のサイバーセキュリティ体制

MRIや心電図といった病院の中核を担う機器もサイバー攻撃にさらされる現代。
日本でも、2016年からの6年間で17医療機関にサイバー攻撃があったとの報告があります。
私たちの命綱となる医療機関をサイバー攻撃から守るソリューションを提供するイスラエルのスタートアップについての記事をご紹介します。

ハッカーから病院を守る技術

2021年10月、イスラエル中部のハデラにあるヒレル・ヤッフェ・メディカルセンターが、ランサムウェア攻撃の犠牲となり、大きな話題となりました。
患者に被害はありませんでしたが、病院のコンピュータシステムが攻撃されたため、職員はペンと紙で記録を更新しなければなりませんでした。

医療機関は一般的に、ハッカーの要求に屈する可能性が最も高い組織のひとつです。しかし、英国のソフトウェア会社Sophos社によれば、彼らがお金を払うということは、さらなる攻撃の連鎖を助長することになるのです。

イスラエルの新興企業であるOneLayer社は、病院のハッカーとの戦いをリードしている企業の一つです。
この企業は、病院内の個々のデバイスを保護し、サイバー犯罪者が病院内のコンピュータシステム全体にアクセスするのを阻止しています。

もし侵入者が侵入できたとしても、そこまでしかできないように、仮想の鉄のカーテンを技術的に構築しています。例えば、監視カメラがハッキングされても、MRIスキャナーには到達できません。

現在の病院には「コネクテッド」デバイスがひしめいています。スマートウォッチからWi-Fi対応洗濯機まで、通信を行うものはすべてコネクテッドデバイスと呼ばれます。

病院では、患者監視装置、レントゲンなどの画像診断装置、診療科間を案内するロボット、血圧計、血糖値モニター、心電図、患者が快適に過ごせるように自動調整するスマートベッドなどがそうです。

これらの機器は、スマートフォンが音声通話やデータの送受信に使用するネットワークと同じように、5Gのプライベートネットワークに接続されています。
昔、病院の設備はケーブルでつながっていました。その後、Wi-Fiに移行しましたが、カバー範囲や接続性が不安定でした。
そのため、ここ3、4年で5GのLAN(ローカルエリアネットワーク)に移行し、より快適になりましたが、攻撃には弱いままです。

ハッカーは、例えば病院のロボットのような個々の機器を狙いますが、それはその機器をコントロールしたいからではなく、それがアクセスポイントだからです。
一度、バックドアから侵入してしまえば、あとは好きな場所で大暴れすることができるのです。

OneLayer社のソリューションは、ネットワークを「保護された通路」に区分けすることで、侵入者が引き起こす被害を限定するものです。
「ネットワークをセグメント化すれば、あるエリアが侵害されても他のエリアには影響しません。例えば、監視カメラやセキュリティカメラは非常に脆弱であり、攻撃者にとって格好の標的です」と、OneLayer社のCEO兼共同設立者のDave Mor氏は現地イスラエルメディアに語っています。

彼は、個々のデバイスを保護するためにソフトウェアを使用するOneLayer社のアプローチは、ネットワークの問題をスキャンする他の方法よりも効果的ですが、輻輳やデータの損失の可能性につながる可能性があると述べています。

「MRIスキャナーのような重要な機器ではないため、監視カメラへのアクセス権を得ても、あまり意味がありません」とMor氏は言います。

「しかし、カメラがMRIと通信できないようにすれば、病院の日常業務を維持することができます。一方の機器に障害が発生しても、他方には影響しないのです。」

「例えば、ロボットは脆弱な機器です。ハッカーは、ロボットを侵入経路として攻撃したいのです。ヒレル・ヤッフェへの攻撃は、ランサムウェア攻撃でした。
彼らは、MRIの使用を止めさせたかったのです。病院のセキュリティに関する試みは常にあり、そのほとんどは公表されていません。」

テルアビブに本社を置くOneLayer社は、個々の機器にソフトウェアを適用しており、まずはドクターカート(患者間で移動可能な車輪付きの医療用ワークステーション)に適用しています。

現在、イスラエルの2つの病院(ナハリヤのガリラヤ医療センターとティベリアス近郊のポーリヤのバルーク・パデ医療センター)と、ノキアとセルコムとの間で契約を結んでいます。
両病院でドクターカート250台を確保しており、今後は他の医療機器や患者用ベッド、IoT(Internet of Things)機器などにも対応していく予定です。

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