COLUMN Reika Saito / Israel Media
COLUMN

Reika Saito / Israel Media

2023年01月10日掲載

イスラエル銀行総裁が指摘するAIの労働力への影響

AI技術で世界を牽引するイスラエル

2,000社以上ものAI研究のための企業が存在するイスラエルは、最先端のサイバーセキュリティやヘルスケア分野などで世界のAI技術へ多大な貢献をしています。
イスラエル銀行の総裁が言及した、AI技術が雇用市場に与える影響についての記事をご紹介します。

AIを活用したチャットボットでスピーチを書くイスラエル銀行総裁

イスラエル銀行の人的資本と労働市場に関する会議で、イスラエル銀行総裁Amir Yaron氏は自分のスピーチの2つのパラグラフが、昨年11月30日に発売されたChatGPT(人工知能(AI)を搭載した、自律的に話したり書いたりできるコンピュータープログラム)によって書かれていることを明かしました。

Elon Musk氏とSam Altman氏が共同設立したMicrosoft社が支援する研究組織であるOpenAIによって設立されたChatGPTは、開始から5日間で100万人以上のユーザーを獲得しました。このツールは、テキストデータで学習させたいわゆる「広義の言語」モデルを用いて、人間のように質問や要求に答えることができます。

Yaron氏は、コンピューターに学習能力を与える技術であるAIがどのように労働力に影響を与え、必然的に雇用市場の変化につながるかを示したいと考えているようでした。また、自動化された職場への移行の一環として、AIスキルのある人材の育成に投資するよう呼びかけました。

Yaron氏は「AIが人的資本に影響を与える最も重要な方法の1つは、現在人間が行っている特定のタスクとプロセスを自動化することです」と指摘し、「これは、労働力で評価されるスキルの種類の変化、および利用可能な仕事の種類の変化につながる可能性があります」と続けました。また、AIの技術的進歩は、AIシステムの開発、プログラミング、管理に長けた人々に新しい雇用機会を生み出す可能性が高く、新しい産業の出現につながる可能性が高いと説明しました。さらにYaron氏は「コミュニティや組織にとって、AIの発展に遅れをとらず、労働市場の潜在的な変化に積極的に適応することが重要です。最終的に、AIが人的資本に与える影響は、AIがどのように採用・利用されるか、また、より自動化された労働力への移行を支援するための政策や取り組みが行われるかどうかにかかっています」と述べました。

過去10年間、イスラエルではAIを用いた技術がヘルスケア、サイバーセキュリティ、自動車技術などの分野で花開き、自動運転車、レントゲンを読み取る機械、アフターサービスにおける顧客の要望に応えるアルゴリズムなどが誕生しています。

イスラエル・イノベーション庁のデータによると、2011年から2020年の間に、イスラエルのAI技術プロジェクトへの投資は3億500万ドルから40億ドル超に急増しました。またStart-Up Nation Central社が収集したデータによると、イスラエルにはAIのコア技術を開発する企業が2,000社以上存在します。なお、2018年末のAI企業数は1,150社、2014年は512社でした。

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